潜水艦/潜水艇(下)

■Yugo級潜水艇

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満載排水量:水上76t、水中90t(以下諸元は、Combat Fleet基準)

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大きさ:20m(全長)×2.0m(全幅)×1.6m(喫水)、ジェーン年鑑96〜97は20×3.1×4.6

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機関:MUTディーゼル・エンジン×1、1軸(160shp)

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最大速度:水中4kt、水上10kt(北朝鮮ハンドブックは、水中8、水上11kt)

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航続距離:水上10kt基準550海里、水中4kt基準50海里

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作戦可能日数

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武装:533mm魚雷×2

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電子装備

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乗務員:2(乗組員)+6〜7(特殊部隊要員)

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原生産国:北朝鮮?

東海岸に浸透した労働党作戦部所属潜水艇 1998年6月、韓国海軍が労働党作戦部所属のYugo級を拿捕した後、正確な諸元を入手したものと考えられるが、まだ資料が充分に公開されていない。

 上の諸元には、乗組員が2名となっているが、実際、98年6月に浸透したYugo級潜水艇に搭乗した人員は、乗組員6名+労働党作戦部所属要員が3名だった。

 Yugo級潜水艇浸透事件当時の国防部公式談話文を見れば、浸透した潜水艇の特徴として、「▲我が軍の監視装備の捕捉を避けるため、FRP材質で戦隊上部包装及び 迷彩塗装で偽装、▲潜水艇の脆弱点である大きな騒音及び低速を補完するため、5毎羽スクリュー付着」等、2点を指摘している。

 特に、Yugo級において視線を引いた点は、スクリューだった。当時、韓国海軍第9潜水艦戦隊長がマスコミとインタビューした内容は、次の通りである(連合通信98年6月27日付)。

 −李ホンフィ第9潜水艦戦隊長と李チンギュ訓練隊長は、今回の潜水艇の特徴に対して次のように指摘した。

ユーゴ級のハイスクリュー・ブレイド 「今回発見された北朝鮮の潜水艇は、小型だが、大型潜水艦に準じる構造をしている。先ず、大部分の潜水艦は、艦首と艦尾に各々1対ずつの水平舵があるが、この潜水艇には、艦首の水平舵がない。艦首水平舵は、普通、低速で潜水するときに使用される。従って、この潜水艇は、艦尾の水平舵が艦首の水平舵機能まで行っていた。

 スクリューも、特異な姿をしている。潜水艦や船舶のスクリューの羽は、一般的に葉っぱ模様をしているが、この潜水艇のスクリューは、三日月模様をしており、これもやや丸く曲げて作られた。これを専門用語で言えば、ハイスクリュー・ブレイドと言うが、これを製作するには、相当に高難度の技術が要求される。

 スクリューが2個とされているのが特異である。直径1m30cm程度になる大きなものは、推進用と見られ、このスクリューの後ろに付いている直径30cm程度の小さなスクリューは、移動時、騒音を減らすために付けられたものと見られる。しかし、このスクリューの用途は、精密分析をしてみなければならないようである。

 小さな艦首に魚雷発射機が2個あることも特徴である。ゲリラ戦には、必要がないと判断、用途を廃棄したものと見られる。

ユーゴ級のハッチ また、下部ハッチが油圧式で内部から開けられ、 外部から人の手では到底開けられないようにされている。李グァンス氏も、初めて見るハッチだと語った。上部ハッチと下部ハッチの間は、普通人3名程度が 入れる空間と高さをしており、海上で潜水艇から脱出する場合、1次に下部ハッチを開けて出て、ハッチを閉めた後、潜水装備を着用した後、内部に信号を送れば、内部から 上部ハッチを開放、外に出ることになっている。

 また、外から中に入ろうとすれば、上部ハッチを開けて入った後、上部ハッチを閉め、上部ハッチと下部ハッチの間に溜まった水を外部に送り出した後、装備を外して内部に入ることになる。上部ハッチと下部ハッチの間で潜水服等が 出て来た理由も、ここにある」(以上インタビュー内容)。

 また、朝鮮日報(98年6月26日付)は、当時浸透した潜水艇が「各種レーダーと水中探知機を避けるための特殊塗料が約0.5cm厚で塗られており、特殊材質であるFRPが部分的に使用された。また、艦首と艦尾部分に1対ずつ水平舵がある他の潜水艦とは異なり、艦尾部分にだけ水平舵1個が装置されている。外部侵入を防ぐため、内部ハッチを油圧式で作ったことも特徴。外部から人力では開けられず、油圧によってのみ開け閉めできるように設計されている。また、小型潜水艇としては、珍しく魚雷発射機2門が装置されており、有事の際には、溶接した部分を取って、攻撃用に転換できるようにされている」と報道したことがある。

ユーゴ級のスクリュー 潜水艦のスクリュー写真は、先進民主主義国家でもほとんど公開しない位軍事機密であることから、 現にYugo級のスクリュー写真を見ても、これがどの程度の技術水準なのかは、民間人が正確に判断するのは難しい。一般的に最近の潜水艦のスクリューは、全てハイスクリュー・ブレイド型をしているという。従って、比較的最近に改良されたYugo級のスクリューがハイスクリュー・ブレイド型であるのは、どう見ても当然のことである。しかし、今更のように 李ホンフィ第9潜水艦戦隊長等がYugo級のスクリューを見て驚いたのを見れば、Yugo級のスクリューの湾曲度と加工技術が米韓両国の軍関係者が考えていたよりは、高い水準だったのは明らかのようである。

 Yugo級のスクリューが持つもう1つの重要な特徴は、二重スクリューである。写真を見れば、大型羽のスクリューと共に約1/10大の小さなスクリューが見えるだろう。上に引用したインタビューでは、小さなスクリューを浸透時の騒音を減少させるための低速航海用と推定している。事実、このように大きさが異なる二重スクリューは、一般に見られない特異な方式である。一部魚雷で二重スクリューを使用した例があり、米国のシーウルフ級攻撃原潜でも、二重スクリューを使用した例があるが、Yugo級のように大きさが異なる二重スクリューを 装着した場合は、知られたことがないという。Yugo級は、何故、二重スクリューを採用したのか?筆者は、造船工学的基礎知識がほとんどない人間で、関連資料が正確に公開されていないことからも、こうだと断定的に結論を下すつもりはない。ただ、各意見を整理してみれば、第1に、98年当時、韓国海軍関係者が推定したように騒音減少のための低速航行用であり得る。第2に、98年拿捕されたYugo級に艦首水平舵がないのを見れば、あるいは、Yugo級の二重スクリューは、水平維持用として使用するのかも知れない。『Guide to Combat Fleets of the World 2000〜2001』は、小型スクリューが騒音減少用(noise reduction)だと紹介している。

 『Guide to Combat Fleets of the World 2000〜2001』では、拿捕されたYugo級に対して大したことではないように、「極度に原始的な設計 Extremely Primitive Design」と評している。

 現在、北朝鮮が保有するYugo級潜水艦は、概ね40〜55余隻程度と推定される。最新版である『Guide to Combat Fleets of the World』2000〜2001年版では、40隻と推定しており、2000年7月基準の『World Navies Today』1.04は、45隻と推定している。サンオ級も同様だが、Yugo級は、大部分正規海軍ではない総参謀部海上処か労働党作戦部所属とされているようである。

 下の図は、98年ユーゴ級浸透事件当時、国防部の公式談話文に添付されていた参考図を若干修正したものである。


ユーゴ級の参考図

−Una級とYugo級、そしてYugo級の開発過程

 既に言及したように、1998年6月、労働党作戦部所属小型浸透用潜水艇がサンマ漁網に掛かって拿捕される事件が発生した。当時拿捕された北朝鮮のYugo級潜水艇に対して、Una級の改良型か、又はUna級の変形だとして、ユーゴスラビアのUna級と連関させて理解しようとする見解がある。北朝鮮のYugo級をUna級と関連させて考えた最も大きな理由は、過去、ジェーン年鑑に載せられた北朝鮮のYugo級の写真が正にユーゴスラビアのUna級の写真だったためである。

 しかし、ジェーン年鑑の北朝鮮項目では、Yugo級という名称を使用したのみで、Una級という名称を当初使用しなかった。従って、JIG側でも、北朝鮮のYugo級が(ユーゴスラビアのUna級と関連はあるのかも知れないが)基本的にUna級とは異なったものと考えていたようである。

 事実、北朝鮮のYugo級がUna級と関連があるのかも知れないが、Yugo級が正にUna級であることはない。北朝鮮の小型潜水艇の系譜は明らかでないが、ユーゴスラビアの小型潜水艇最初の製造時期が北朝鮮より早いことだけはないためである。ユーゴスラビア独自で建造した最初の潜水艦は、1957年に建造を始めたSutjeska級(標準排水量700t級)である。以後、1960年代にSutjeska級の改良型であるHeroj級(標準排水量1,170t)、1970年代にHeroj級の改良型であるSava級(標準排水量830t)とLora級を各々建造した。

 しかし、ユーゴスラビアが最初に建造した小型潜水艇は、少なくとも1980年代以後建造が行われているUna級である(ユーゴスラビア分裂以後、Una級を建造していたBrodosplit造船所は、クロアチア共和国の所有となった。)。Una級1番艦の場合、過去には、85年に建造されたと知られているが、冷戦終息後には、1番艦が1981年に建造されたと紹介されている。この時点ならば、北朝鮮の改良型小型潜水艇であるユーゴ級の開発時期とほぼ同じ時期である。筆者が見るには、北朝鮮とユーゴスラビア間で共同で小型潜水艇を開発、研究したことが実情に近いようである。その点において、ユーゴスラビアからYugo級を輸入したとうジェーン年鑑の内容よりは、ユーゴスラビアから設計上の助けを受けたという米海軍研究所(Naval Institute)系列資料がより慎重な説明と考えられる。

 ジェーン年鑑の場合、94〜95年版までは、漠然と「Midget Submarine(小型潜水艇)」と紹介したのみで、具体的なClass Nameを明示してはいなかった。そのうちに、96〜97年版では、「Yugo級」という表現を初めて使用した。『Guide to Combat Fleets of the World』は、98〜99年版までは、単純に「North Korean-Design Midget Submarine(北朝鮮製小型潜水艇)」と紹介したのみで、具体的なClass Nameは、明示していなかった。2000〜2001年版で初めてYugo級という名称を正式に使用した。

 資料により差異があるが、ユーゴスラビアから輸入をしたのではなければ、単純に設計上の助けを受けていた間に、北朝鮮のYugo級は、ユーゴスラビアと関連があるため、Yugo級という名称が付いたようである。米海兵隊の北朝鮮ハンドブックにも、Yugo級というClass Nameが搭乗することを見れば、サンオ級と同様にYugo級も、米海軍情報当局が作ったClass Nameのようである。

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ジェーン年鑑92〜93年版は、北朝鮮の小型潜水艇は、1960年代から육대소리造船所で建造され、後期型小型潜水艇は、ユーゴスラビアから輸入したもので、70年代中葉から生産を始め、1992年を基準に総数量が48隻だと紹介している。

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ジェーン年鑑94〜95年版は、北朝鮮の小型潜水艇は、数種のモデルがあり、1960年代初盤からユクデソリ造船所で建造され、小型潜水艇後期型モデルは、ユーゴから輸入したもので、概ね1970年代中葉から建造が始まり、1983年から大量生産を始めたという。1987年から最新モデルが生産され始め、その内1台は、イランに輸出されたという。1994年基準で全体数量は、60隻と紹介している。

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ジェーン年鑑96〜97年版は、初めてYugo級という名称を使用したが、その他の説明は、94〜95年版と類似している。

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『Guide to Combat Fleets of the World 1998〜1999』では、Yugo級という名称は使用せず、ただ、「北朝鮮製小型潜水艇」が1965年から ユクデソリ造船所(Yukdaeso-ri Shipyard)で建造され、設計時にユーゴスラビアの支援を受けたものと推定し、総数量は、55隻程度と推定している。

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『Guide to Combat Fleets of the World 2000〜2001』では、初めてYugo級というClass Nameを使用し、西側でYugo級というニックネームを使用する理由は、この潜水艇がユーゴスラビアの設計や技術的支援を受けたものと信じたためだと紹介している。1965年から1980年代後半まで建造が行われているとし、既に初期に生産されたYugo級の一部は、その運用年限が尽き、最小限9隻のYugo級は、退役したものと推定し、現在のYugo級の総数量は、40隻内外であるものと推定している。

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あるいは、内外通信系列の資料では、「北朝鮮が1974年にユーゴスラビアから潜水艇を6隻を輸入して運用しているが、80年代中盤頃からこれを改造した独自型を生産している」と説明もしている。

 これら全ての資料を総合してみれば、既に北朝鮮は、1960年代から独自的な小型浸透用潜水艦を建造したが、性能上に限界があり、ユーゴスラビアと共同開発を進行していたようである。その過程において、部分的にユーゴスラビアで建造した小型潜水艇を直輸入(1974年、6隻?)した可能性も排除できない。しかし、現在40余隻に達する浸透用潜水艇の大部分は、ユーゴスラビアと共同開発を行ったものだが、基本的に北朝鮮で直接建造したもののようである。 簡単に言えば、98年に鹵獲された潜水艇は、Una級と関連が関連があるにはあるが、全く異なる潜水艇である。

 しかし、依然いくつかの疑問は残る。1998年に鹵獲された浸透用潜水艇がUna級と区別される独自的なモデルということは明らかである。しかし、74年にユーゴスラビアから潜水艇を輸入したという内容は事実なのか、事実とすれば、そのモデルは、正確にいかなる背能を持っており、Una級とはいかなる関連があるのか、それ以後北朝鮮で自主生産したモデルと直輸入モデルは、いかに異なっているのか、過去単純にMidger Submarine又はYugo級として紹介していた潜水艇が98年鹵獲された潜水艇と完全に同じモデルなのかは、依然疑問事項である。

 このような関係が明白に整理されなければ、我々が普通Yugo級と呼ぶ潜水艇には、60年代初め北朝鮮で自主建造した北朝鮮自主生産型浸透用潜水艇、74年にユーゴから輸入された潜水艇、ユーゴとの共同開発を経て80年代中葉から北朝鮮で自主建造したユーゴ級潜水艇、1987年から作られている最新型ユーゴ級、1998年に韓国海軍に鹵獲された潜水艇、更に追加で存在するかも知れない数種の変種モデルまで ごっちゃ混ぜになるだろう。その点において、Yugo級というClass Nameを果敢に使用するジェーン年鑑よりは、North Korean-Design Midget Submarineという慎重かつ包括的な表現を使用していたNaval Institute系列の資料に より点数を与えたい。

 過去の各種資料を見れば、北朝鮮が25t級浸透用潜水艇を保有している説明がしばしば出てくる。25tという数値が正確なものかは分からないが、若しかすると、この25t潜水艇が 正に65年から生産されたという北朝鮮自主生産型浸透用潜水艇なのかも知れない。各種資料を見れば、1965年又は1966年に浸透用潜水艇1隻が韓国海軍に拿捕されたことがあるという。

■その他の浸透用潜水艇

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満載排水量:重量3t(NKSF 98基準)

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大きさ:5.7m(全長)

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機関

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最大速度

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航続距離

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作戦可能日数

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武装

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電子装備

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乗務員3名

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原生産国:北朝鮮?

小型浸透用潜水艇

 1965年7月、漢江と臨津江下流地点で発見された小型浸透用潜水艇である。

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最終更新日:2003/05/25

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